チェンバロは、バッハやヘンデルが活躍したバロック時代まで盛んに演奏された鍵盤楽器です。ピアノの台頭と入れ替わるようにして一度は弾かれなくなりましたが、20世紀に復興し再び演奏されるようになりました。
チェンバロには「弦をはじいて音を出す」という共通の特徴があるものの、実にさまざなタイプが存在します。グランドピアノを細身にしたような形のもの、長方形のもの、三角形のもの等、形状だけを例にとっても本当にいろいろなのです。これは、かつてチェンバロという楽器が、国・時代によって、それぞれ独自の工夫を凝らして製作されたことに由来します。 おおよその規格が決まっている現代のピアノにはない面白さではないかと思います。
ここでは、私達Inventioが演奏会で使用している3つの楽器についてご紹介します。
スピネット
スピネットは小型のチェンバロの1つでです。イタリアで生まれ、17、18世紀のヨーロッパの裕福な家庭を中心に広く演奏されました。コンパクトなボディ、当時としては広い音域、そしてクリアな音色を特徴としています。
Inventioのカフェ・コンサートで使用しているスピネットは、アルベール・ドゥランの製作した楽器(1770)のレプリカです。現代のフランスのチェンバロ製作家、M. デュコルネの工房で作られました。オリジナルの楽器の製作者、ドゥランは、18世紀半ばにベルギーのトゥルーネという町で活躍し、主に一段鍵盤のチェンバロを製作した人物だったそうです。
一段ハープシコード
チェンバロが復興してから現在に至るまで、チェンバロ作りの世界ではさまざまな試みが行われました。このチェンバロが作られた1970年代は 、チェンバロ製作のポリシーが大きく変わっていっていた時代。現在製作されているチェンバロの特徴と、旧世代の特徴、その両方が見受けられる楽器です。
フレミッシュ・2段ハープシコード
17世紀のフランダース地方(ベルギー・オランダ)で製作され、後に、音域を拡張された楽器のレプリカです。グランドピアノを細見にしたような姿、ピアノとは白黒反転した2段鍵盤等々、チェンバロの一般的な?イメージに一番近い楽器かと思います。 楽器の内部には「フレミッシュ・ペーパー」と呼ばれる紙が丁寧に貼られていますが、これは、フランダース地方独特の装飾方法でした。